特集:イラク外国人拘束 اعتقال الأجانب في العراق | ||
イラクのレジスタンス戦士 (画像はコピーレフトで、出典はWikipedia) |
画像をクリックすると、拡大して見えます。(自作画像) |
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3月22日 | イスラエル軍がパレスチナの武装勢力ハマスの指導者アハマド・ヤシン師をミサイルで殺害。 |
3月31日 | イラク・ファッルージャで、アメリカ人4名の請負業者が殺害され、遺体が損壊される。 |
4月6日 | 米軍がファッルージャへ侵攻、住民約100名が殺害される。イギリス人1名がナシリヤで拘束。 |
4月7日 | 日本人3名がファッルージャ付近で拘束される。 |
4月8日 | 韓国人牧師7名が拘束される。アラブ系イスラエル人2名が拘束。 アルジャズィーラTVを通して日本人人質解放と引き換えに自衛隊撤退を要求する声明が放映される。福田官房長官が拒否発言。 |
4月9日頃 | ファッルージャの住民死者が400名を超える。アメリカ人1名が拘束され、後に斬首される。 韓国人7名が解放される。 |
4月10日 | 日本人人質を24時間以内に解放するという声明が報道される。 |
4月11日 | 外国人人質8名(フィリピン・ネパール・インド・パキスタン・トルコ)が解放される。ナシリヤのイギリス人も解放が明らかになる。 |
4月13日 | イタリア人4名が拘束され、軍の撤退が要求される。 |
4月14日 | 日本人2名が新たに拘束される。イタリアの拒否に対し、人質ファブリツィオ・クワットロッキ(Fabrizio Quattrocchi)さんが殺害される。 |
4月15日 | 日本人3名が解放される。 |
4月17日 | 日本人2名が解放される。 |
4月26日 | 自民党の柏村武昭・参院議員が解放された邦人人質を「反政府、反日的分子」と攻撃。 (「お笑いマンガ道場」司会アナの頃は人が良さそうだったのに、カッシーも議員になって傲慢になってしまった) |
5月2日 | アメリカ人人質1名が自力で脱走、保護される。 |
5月12日 | アメリカ人人質1名(ニコラス・バーグさん)が捕虜虐待の報復として斬首される動画が公開される。(関連CNN記事) |
5月20日 | 邦人人質3名が帰国報告集会(東京・中野) |
5月27日 | 日本人2名(橋田信介さん・小川功太郎)が襲撃・殺害される。(官房長官記者発表) |
6月17日 | 韓国人 金鮮一(キム・ソンイル)さんが、ザルカウィ氏関連の武装グループに拘束される。 |
6月20日 | 金鮮一さんを人質とし、韓国軍の撤退を要求するビデオがアルジャズィーラで放映された。(関連記事) |
6月22日 | 金鮮一さん(33歳)の斬首された遺体がバグダード近郊で発見される。(関連記事) |
6月26日 | トルコ人3名がザルカウィ氏系の武装グループ「タウヒード・ワ・ジハード」により拘束される。 |
6月27日 | アメリカ軍の海兵隊員1名の拘束が明らかになる。 |
6月29日 | 4月に拘束されたアメリカ軍のキース・モーピン上等兵(30歳)と見られる人質が殺害されるビデオをアルジャズィーラが放映。 トルコ人3名が解放される。 |
7月 7日 | エジプト人(米軍に物資を運搬していた)の拉致が明らかになる。 フィリピン人1名を拘束した武装グループがフィリピン軍の72時間以内の撤退を要求する。 |
項目データ | ||||||
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日本語表記 | 英訳 | アラビア語表記 | 項目説明 | |||
外国人 | foreigner, alien |
أجنبي アジュナビー | 複数形は أجانب アジャーニブ | |||
拘束 | restraint | اعتقال イウティカール | 捕まえて、行動の自由を束縛すること | |||
誘拐、拉致 | kidnapping, abduction |
اختطاف イフティターフ | 誘拐…人をだまして連れ去ること 拉致…強制的に連れ去ること |
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解放 | liberation | إطلاق سراح イトラーク・サラーフ | 束縛を解いて自由にすること | |||
占領 | occupation | احتلال イフティラール | 他国を強制的に自国の支配下に置くこと | |||
アメリカのイラク占領 | U.S.-led occupation of Iraq | الاحتلال الأمريكي في العراق | イラクの油田を米国のものとし、 中東支配の拠点とする占領 |
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ジハード(義戦) | Jihad | جهاد ジハード | 狭義は、イスラーム世界を 防衛するための戦い |
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ムジャーヒディーン | Mujahideen | مجاهد ムジャーヒド | ジハードを行う者 | |||
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@サラーヤー・アル=ムジャーヒディーン سرايا المجاهدين
Aサラーヤー・リ=ムジャーヒディーン سرايا لمجاهدين
表記 「サラヤ・ムジャヒディン」は、イラクで日本人人質3名を拘束したとされるグループの日本で流布した呼称ですが、アラビア語での呼称は上記の2通りがあります。 @がアルジャズィーラTVが放映して広く流布した呼称ですが、Aが当該グループが実際に署名している呼称で、単純ミスなのか、表記にブレがあるわけです。 字義 @もAも意味はほぼ同じで、「アル」は定冠詞、「リ」は所属などを示す前置詞です。 「サラーヤー」(سرايا)は「サリーヤ」(سرية)の複数形で、これが軍隊用語だとすると、「(陸軍の)諸旅団」あるいは「(陸軍の)諸中隊」などと訳されます。 旅団と中隊では規模がちがいます。同じような武装グループに「カターイブ・〜」(كتائب)というのがありますが、これは「カティーバ」(كتيبة)の複数形で「(陸軍の)諸大隊」と訳されます。 とすると、「サラーヤー」は「諸中隊」と類推されます。「ムジャーヒディーン」(مجاهدين)とは、「ジハード」(جهاد)すなわち「義戦」を行う者=「戦士」の複数形です。 よって「戦士たちの諸中隊」と訳せます。「サラーヤー」と複数形になっていますが、これは帰国した人質たちの報告によると、複数のグループによって構成されている、ということのようです。 またこれまでの報道から、彼らは米軍に家族を殺されて決起した武装住民と思われます。 となると、軍隊用語と厳密に捉えるのは大げさかも知れません。 大雑把に意訳して「正義の戦隊」というところでしょうか。 えっ、正義の戦隊がなぜ誘拐をするのって? それは彼らの声明文(下記)を読んで判断してください。 正体 ファッルージャの戦闘において、米軍によって家族を殺され、武器を持って決起したいくつかの住民グループの混成集合体、 というところでしょうか。「テロリスト」なんて呼ぶのもはばかられる素人集団ではないでしょうか。 |
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サラヤ・ムジャヒディン(以下、サラヤと略記)による人質解放声明文は、次の四つの部分に大別できます。 | |
A | 日本政府の対応に対する非難 |
B | 転じて、アメリカの日本とファッルージャに対する殺戮を非難 |
C | 人質を解放する理由を列挙 |
D | 人質の解放と要求 |
以下では、このA〜Dからさらに細かくA−1,〜,D−7などと区切って、細かく分析してみます。 誤字脱字と思われる箇所は赤字にしてあります。 |
【バ ス マ ラ】
注:これは「バスマラ」といって、クルアーン(コーラン)の章句で、敬虔なムスリム(イスラーム教徒)が文章を書くときに必ず始めに置く文句です。
【A−1】
【拙訳】すでに我々は、日本兵士3名の拘束において、日本政府が自国民の生命を軽視するコメントをしたことを、大きな痛みをもって聞いた。
注:サラヤが3人の人質を兵士と呼んでいるのが、奇妙な点です。
新聞各社の訳では、「兵士」を「人質」とすりかえて訳しています。
【A−2】
【拙訳】このことは我々に、日本政府の狡猾さから我がイラク国民を保護して我々が行なったことの合法性の充分な幅を与えたのだ。
注:新聞各社が「我が国民」を「日本国民」と訳しているのを、私は大きな痛みをもって読みました。それともمواطنيناを対訳と誤認したのでしょうか。
サラヤは、日本政府の発言が彼らを免罪したのだと言い訳しています。 【A−3】
【拙訳】日本政府は、自国民に対する最低限の尊敬をすら考慮していないように思われる。
注: تعير の訳は「貸す」ですが、
これは文脈から見て تعتبر 「考慮する」の誤植でしょう。
【A−4】
【拙訳】ならば一体全体、日本政府首長の発言および彼が言ったことやしゃべったいることの尊大さを拒否している我が(イラク)国民の生命をや(考慮するだろうか)。
【A−5】
【拙訳】しかしながら我々は、これらの政治家がその人民の鼓動や意志を代表(代弁)していないという確信を抱いている。
【B−1】
【拙訳】それどころか、これらの政治家は戦争犯罪者ブッシュとブレアを補間することに隷属されている(と我々は確信している)
注:ここで補間とは、地上戦終結後に日本が派兵を強いられたことを指すと思われます。
【B−2】
【拙訳】その確信が我々をして日本の街頭のとどろきを聞かしめた。以下のことをこの通りの人々に想い起こさせながら。
「とどろき」とはデモ行進のシュプレヒコールを指すと思われます。
【B−3】
【拙訳】広島と長崎における集団殺戮作戦において核爆弾であなたたちを爆撃したアメリカは、
注:ضرَّ「害した」ではなく、文字が切れている部分を補って ضرب とすれば「爆撃した」となります。広島と長崎はつづりが間違っています。これをもって声明文は自作自演だとする人たちがいますが、アラブ人が日本の地名を間違えるのはよくありうることです。アラブでは長崎を「ナカザキ」(ناكازاكي)と呼ぶ人もいるくらいです。
【B−4】
【拙訳】戦いかつ立ち向かっているファッルージャにおいて、同じことを痛みを与えることと野蛮さにおいてより激しい方法で、国際的に禁じられた爆弾で行っている。
注:「国際的に禁じられた爆弾」とは対人地雷のこと、あるいは国際的に激しく非難されているクラスター爆弾などを指すと思われます。「劣化ウラン弾では」という人もいますが、これは国際的に禁止されてはいません。
【C−1】
【拙訳】そして、イラクのレジスタンスはどんな平和な外国民間人 <その宗教的・血族的・宗派的所属が何であれ> をも狙っていない、ということを我々が全世界に知らしめるため
【C−2】
【拙訳】かつ、イラクのレジスタンスが責任のあるレベルにあるということ(をも我々が全世界に知らしめるために)
【C−3】
【拙訳】イラク・ムスリム有識者協会の原則とその高潔さ・勇気への我々の全幅の信頼のため
注:ثقتا は途中で切れていますが、 ثقتنا (我々の信頼)だと思われます。
【C−4】
【拙訳】その協会の呼びかけが今日の晩にマスメディアを通して見出されたものである
【C−5】
【拙訳】かつ、占領諸国に属するこれらの日本人に汚れがなく、イラク人民の支えであることを、我々の特別の情報筋から確認したため
【C−6】
【拙訳】彼らの家族の嘆きを考慮しながら、この問題への日本人民の態度を愛しながら
【D−1】
【拙訳】それゆえに、すでに我々は次のことを決定した
【D−2】
【拙訳】1.イラク・ムスリム有識者協会の要求を早急に承諾すること、
【D−3】
【拙訳】敬愛され歓待される3人の日本人を、至高なる御神が思し召すならば来たる24時間の間に解放すること
注:القـ دمة は途中で切れていますが、おそらく القادمة でしょう。
【D−4】
【拙訳】アメリカの圧制にまだうめいている友邦・日本人民への要求
【D−5】
【拙訳】日本政府にイラクから軍隊を撤退することをできるだけ圧力をかけることに参加することを(要求する)
注:بسحب は لسحب の方がよいでしょう。
【D−6】
【拙訳】なぜなら(日本の軍隊の)その存在は合法的でなく、かつアメリカの占領期間の延長に参加するからだ
【D−7】
【拙訳】御神は偉大なり。そしてこれは勝利に至るまでの義戦(ジハード)のためである。
【日付1】
【拙訳】ヒジュラ暦(イスラーム暦)1425年サファル月19日
注:ヒジュラ暦はイスラーム圏で用いられる太陰暦。هـ は هجرية (ヒジュラ暦の)の略。
【日付2】
【拙訳】西暦2004年4月10日
注:م は ميلادية の略、すなわちイエスの ميلاد (誕生)に由来するキリスト紀元の暦を表します。
【署名】
【拙訳】サラーヤー・リ=ムジャーヒディーン(戦士の諸中隊)
注:前述のとおり、報道された名称とは若干異なります。
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